お知らせ。3つある。
その1。状況証拠から察するに、だけど(※抗原検査とかしてないので正確なところが分かんない為)。コロナになった。同時発症の同居者にコロナの確定診断が出たので、恐らく自分も同じ。出てた症状もほぼ同じだしね。
発熱やら雨やらで出掛けるのが面倒で(オイ)病院に行かずに過ごして四日目だけど、案外どうにかなってる。吸入薬と、家にストックしてあった市販のアセトアミノフェンのおかげ。
熱も下がって、鼻水も引いて(鼻かみすぎて耳も少しだけヤっちまった)、なぜか怒涛の勢いで出てたクシャミも静まり、今は咳と痰に終わりが見えないターンに入った。
(2023/06/30追記:痰が引いて呼吸が楽になったんだけど、不思議と咳が残っている。喘息の吸入薬も効いてる気配がなく、なんだか変な咳なんだよね。突然、何の前触れもなく口蓋垂の裏側を針でチクッとやられたような痛みが来たあとに、反射みたいな感じで咳の発作が止まらなくなり、終いにはオエッとえずく、みたいな。そんな感じのが日に3~4回ある。こんな変な症状は初めてで驚いてるけど、意外な対処法「アレグラ等、抗ヒスタミン薬を呑む」を見つけ、なんとか頻度が減った。でも、しんどいわ。30秒ぐらい続くえずくほどの咳、これ一回だけで相当なカロリーを消費させられてる気がしてる。一体何なんだ、これは??)
その上、味覚がちょっと狂ったうえに嗅覚が完全に麻痺したっぽい。
本当に、この記事を書く直前の話に気付いたことなんだけど。シャバシャバした直後の消臭元のニオイが、どんなにろ紙に鼻を近付けても分からなくてさ。白檀のかおりが、全くわかんねぇ!!っていうのが地味にショックだった。
そして鼻の中にはずっと変なにおいが漂っている。蓄膿症みたいな腐敗臭とは違うんだけど、なんだろう、うーん……腐りかけのリンゴのにおい?? いや、これも腐敗臭か。うーん、う~~~~ん……表現に困るな、この苦痛は。全然耐えられるレベルのギリ不愉快じゃない悪臭なのが、なんともいえない。
(2023/06/25追記:最近はDEOCO的な人工感ある桃のにおいと、排気ガスのような埃くさいにおいが交互に来てる。たまに梅雨時のカビっぽい畳のニオイ。幻臭、もうイヤだ。DEOCO臭は全然いいんだけど、それ以外がイヤすぎる)
まあー、とりあえず症状がある程度収まって少し経ってから、ゴリゴリに減ってしまった喘息の吸入薬の処方箋を求めがてら病院に行くつもりではいる。そのときまでに嗅覚障害とかが残ってなければいいけど。残ってたら、そのときは相談するしか……。
んで、お知らせその2。こんな体調なんで「あざらねこ」はしばらく更新ムリです。前回のお話を更新したタイミングから実は体調を少し崩していた(コロナではなく、気圧の乱高下によるもの)のだけど、そこに追い打ちを掛けるようにコロナがきちまったもんで。文は書けても、絵までもは無理。短時間でババッと一ページを仕上げるための超・集中力を支える体力が今はない。なので漫画は休む。ごめん。
最後に、お知らせその3。ジェットブラック・ジグ、4部構成にするって言ったけど取り消します。やっぱり5部にする。5部で、本当に本当に終わりにする!!!
4部はそこまで長くするつもりはなかったけど、「あざらねこ」のお陰で本編に乱入決定したコービン(尚、彼が作中に本格登場するのは5部からの予定)の導入の話で尺をとられてしまい……これはもう、4部で終わりにするのは無理だなってなった。
そして、今回はその「4部」の備考(を書く予定)です。れっつごー!
「ジェットブラック・ジグ:④葬送の門火」について
幾度目かの立場説明:
自分には「作品の”正しい解釈”は、作者が複数の答えを用意していない限りは、作者が定めるものひとつであるべき」という考えがあり、書いたものに関しては意図の解説を残しておくことを徹底しています。
たとえば「解釈は各々に任せる」「想像の余地を残しておくべき」といった、読み手の解釈に委ねるといった態度は正直言うと、気に入りません。それはそもそも答えを用意していないだけでしょう?と考えております(というか、自分がそのような発言をするときは、決まって答えを考えてないときだからです。例えば、適当に書いた楽曲の歌詞など)。
長々と説明するなんて恥ずかしくないのかだのと意見されたこともありますが、この態度を曲げるつもりはありません。なので、このような記事を残しています。
では、本題に入りましょう。
「曙の女王」の鼻歌の正体は「Cam feneita」でありんす。
冒頭から出てくる「曙の女王」様。その彼女が口ずさんでた歌がありますが、これは2年前だかに出した曲「Cam feneita」です。
これは決別のうたですねー。それもかなり未練がましいうえに逆恨みのうたー。
大改訂で追加された新キャラ「セシリア」が段階的に存在を主張し始めた4巻。
ジェットブラック・ジグの3巻にて初登場し、大改訂によって「ヒューマンエラー」と「ウォーター・アンダー・ザ・ブリッジ」においても言及される存在となった「セシリア・ケイヒル」というキャラクター。
完全なる後付けのキャラなのに、新たに書き換わったペルモンドの話ではそこそこ重要なポストにいる役だったので、大改訂のテコ入れが大変だった思い出があります。
そんなセシリアの位置づけはやや特殊。さらに、セシリア本人が登場するシーンが一切ないため、謎多き存在になっている。
シスルウッドやクロエが「セシリアから聞いたよ」とか彼女との接触があったことを示したりするのみで、彼女の登場シーンは未だに無いんですよね。彼女が発したセリフも、回想というかたちで登場するものがひとつだけとなっているし。
またセシリアと接点がある人物たちも、セシリアという人物の人となりについては今のところ全く喋っていない。辛うじて、シスルウッドが発した幾つかの台詞から「セシリアはかなり正義感が強い人物で、と同時に強い責任感の持ち主」だということが分かるくらいだろうか。
そして“世間においてのセシリアの評判”に関しては、大改訂版「ヒューマンエラー」に追加されたノエミの台詞ぐらいしか、今のところ記述がない。
「バルロッツィ財団の理事長、セシリア・ケイヒル。世間での評判を信じるなら、彼女、かなりの人格者よ。聖人すぎて怖いぐらい。――まあ、その聖人に今は困らされているわけなのだけど」
―― ヒューマンエラー:ep.03
なおセシリアは5巻あたりで本人降臨できたらいいなーって考えてる。ペルモンドの一人娘エリーヌも本編に復活登場したしね。それに多分アーサーは、セシリアにだけは接触を図っていると思うから。
ノエミは作者的に「幸せになって欲しいキャラ」ぶっちぎりの一位だけれども。
ノエミってキャラクターはずーっと不思議なポジションにいる。主要人物の中に割り込んでいながらも、ちょっと他のメンツより一歩引いた場所にいる感じがあるキャラだ。カルロと横並びの存在のように見えてカルロより一歩引いている、みたいな。
とはいえ。一歩引いているといえど、その立ち位置がかなり重く作用する場面が目立つ。ノエミはその立場から、トラブルメーカーに振り回されっぱなしだし、それはジェットブラック・ジグでも同じ。
4巻にて再び、バーニーと共に登場したノエミですけんども、彼女は5巻のほうでも出したいなと考えてます。
そして、ノエミといえば「モテそうで異常にモテないため未だ独身のまま(結婚願望はかなり強め)」「家事が絶望的にできなくて、パトリックから『汚部屋女王』と名付けられる」というエピソードが強い。が、そのノエミもついに結婚。苦労人バーニー、彼が旦那になった。イイ男をゲットできたと思うぜ、ノエミ!
家事が好きで、きれい好きにして世話焼き。作中で一番イイ男ユーリに並ぶクラスのとんでもないイイ男だと思いますよ! ノエミに恋愛感情を一切抱いていないことと、職業柄四六時中「死臭」をまとっていること以外には、バーニーに欠点も無いしね!!
生きている人間よりも死体を相手にしている時間のほうが長かったバーニーは「生きていく」ってことに対して、かなりドライな態度を取ってる人だと思うし。たぶん、彼がノエミに「仕方ない、結婚してやってもいいわよ」と言った理由だって「老後、ひとりだと色々と不都合が……」っていう理由からだと思う。彼は間違いなく、ノエミのことを女としては見ちゃいないだろうし。ノエミは今後も「鋼鉄の処女」のまんまだと思います。
「そうよ、私はアイアン・メイデン。甘い幻想を股間に抱いて近付いてきた男どもを、懐に隠し持った“ありのままの姿”って針でグサグサ刺しちゃうんだから。男どもを幻滅させて、逃げ帰しちゃうのよ。……そして逃げて行った男たちはいつもリッキーに取られた。男に、男を取られたの!」
――ディープ・スロート・スローター:ep.07
でも、友人としてのノエミ・セディージョのことは彼も好きだと思うし。二人で余生を仲良く過ごしてくれやーって思いますわ、ほんまに。
リッキーだって、きっとそれを望んでるぜ(尚、リッキーことパトリックが略奪を働いた理由は「ノエミの男を見る目がダメダメすぎるから」;要するにノエミにハニトラ仕掛ける気しかない悪い男たちを彼が逆に引っ掛けてやったってこと。そしてリッキーが奪い取った男たちはその後、ブタ箱にぶち込まれるか、彼の従順な奴隷になっているという裏話がある)。
オーウェンの話は、実は10年前からずっとあるものだった。
ep.08の冒頭に出てくる「オーウェンの物語」は、かれこれ10年以上前からずっと頭の中にあったもの。「神ノ禍」を書いていた頃には既に出来上がっていて、でもそのエピソードを出すタイミングがずっとなかった。それをようやく蔵出しできたのです。
「神ノ禍」で放っておかれっぱなしだった布石を、やっと拾えたね。よかった、って思いでいっぱいです(逆を言うと、これは「神ノ禍」を読まなければイマイチ分からない話でもある。ユリヤという人物についての話は、特に)。
それに、オーウェンの話の他にも、ジェットブラック・ジグ4巻以降はもはや「神ノ禍」を読んでいなければ付いてこられない展開になっているのが事実。「空中要塞アルストグラン」という話だけでも結構面倒なごちゃ混ぜ具合なのに、更に「神ノ禍」の軸も加わって、込み入った厄介な物語になってますけども、でもやりたいこと・書きたいものがコレなので仕方ないです。特に申し訳ないとか思ってない。
前々から言っている通り、ここから「エールケディスの旅人」の世界に繋げなくちゃいけないわけだから。これからドンドン面倒な話になっていく、それは覚悟しておいてほしい。
文句も苦情も助言も受け付けていない。付いてこられるやつだけ、来い。今後の物語については、あくまでもそういうスタンスを貫くつもりです。
そして、エールケディス関連の小ネタでひとつ。ゲーム内で名前が明かされていなかった「チャリスの遣い」のひとりについてですが。彼、ないし彼女の正体は、ジェットブラック・ジグ3巻から登場するようになったあの御方です。玉無し卿ですよ。
その人の存在が今後どう響いてくるかは、お楽しみに……。
ジェニファーのマシンガントークは、あれでも8割ぐらいカットしてる。
ジェットブラック・ジグ四巻から、アストレアらの生きる時間軸のほうにも登場するようになったジェニファーさん。彼女の台詞は一つ一つが本当に長い。が、その大半が重要じゃないという曲者である。
まあ、さ。つまり、彼女の台詞を書くのが楽しかったんだよね。だから台詞がアホみたい長さになってしまっていた。
作中のアレでも十分に長いけれども、元のセリフは比じゃないレベルで長かった。だから大部分をカットして、エッセンスだけを残す処置を加えたんだ。あれでも、短くなったほうなんだ。
パトリックとかとはまた毛色が違う道化師であるジェニファーは、他に居そうで居ない代替の効かないキャラだったりする。だから死んだことにてしまうのが惜しかった。ので、超活発な現役バリバリのおばあちゃんとして再登場してもらったかたち。
若かりし頃と大して変わらぬフリーダムさを発揮するジェニファーに、イライラカリカリしてしまう『アーちゃん』の大きく変わってしまった姿。この対比が、ジェニファー登場シーンにおいて重要な箇所でした。
間抜けな「アーちゃん」のドジっぷりは書いてて楽しかったです。
第四巻では、シスルウッドが死んで生き返らされて「死霊の掃除屋アーサー」となった、その直後の頃を描いてます。時間軸でいうと「ヒューマンエラー」の少し前といったところです。
「ヒューマンエラー」では、ぎこちないながらもボスっぽい威厳をちょっと見せる(けれどもなんだか頼りない)アーサーですが、そのアーサーが出来上がる前のポンコツだった頃の彼を第四巻では描いてます。
死んで生き返った際に受けたダメージから記憶がまっさらになり、ドジで間抜けなポンコツに成り下がっていたアーサーの姿は、描いてて楽しかったです。後に、彼がアストレアの前で見せるようになる"素顔に近い顔"の源泉であるその姿は、本当にどうしようもない人間を極めている。
キザぶって皮肉を言いながらも、カッコつけた直後に何もないところで盛大にズッコケてみせる抜けた感じが、愛おしいなって。かつての友人たちが愛していた彼のヘンテコな側面だけが全面にドドンと出ている雰囲気。記憶を一時的に失くしてたことで毒気の薄い彼は、この巻でコメディリリーフのような役回りになっているところがある。
その一方で、元気だった頃のケイじいの感じ悪さは神がかっている。やっと、このケイじいを書けたことにも達成感を覚えてます。このケイじいがずっと書きたかったんだ……!
アーサー視点はとにかく書くのが面倒。
今、ジェットブラック・ジグを執筆しながら同時並行で旧作のDTP作業を進めている。今は「①EQPのセオリー:本文が終わって、絵を描くだけになった」「②ヒューマンエラー:本文の作業中」ってとこかな。
文章の流し込みをしたり、ルビを振り直したり、記号や数字なんかの手直しをしながら、ついでに文章の見直し・リライトとかもやってるんだけど。その作業中にもいくつか発見があった。
もともと「空中要塞アルストグラン」というシリーズ作品は、巻数が進むにつれて文体がハードになっていくという特徴を持っていたんだけど。「文体がハード」というそれ以前に、「視点人物によって文章の書き方のクセが変わってた」っていうことに気が付いたんだ。
「①EQPのセオリー」の視点人物は、主にアレックス。アレックス視点は「その人が今、何をしているか」という動きを重視する文章になっていて、背景にある景色や音の描写はない。また、心情の変化を表す描写は少なく、せいぜい表情の変化だけが語られるのみで、となれば彼女の心情も滅多に語られない。全体的に、かなりドライなトーンである。この特徴は、その後の作品におけるアレックス視点のシーンでも同様に見られている(ちなみに、ノエミそしてアストレアが視点となるシーンも同様の特徴を持っている)。
あと「①EQPのセオリー」には、一時的に視点がニールに移るところがあるんだけど。ニール視点になった途端に文章は「ニールが今、何を思っていて、何をどのように見ているか」に比重が置かれるようになる。アレックスのターンと特徴が大きく変わってるんだよね。この変化は意識せずに作り出してたものだった。
それから「②ヒューマンエラー」は、主にパトリック視点で語られるわけだけど。これがとんでもなく投げ遣りな感じで、大半の出来事が「何かが起きてるけど、パトリックにはワケが分かってない」で片付けられている。あと文章が全体的に愚痴っぽくてイヤな感じに湿っている(パトリックって生まれつき精巣が無いので、その影響で性格がネガティブになっている。あの性格にはそういう理由がある)。そしてパトリックの主観が大半を占めていて、彼の視線が向く先で話が進んでいき、彼の意識が向いていない場所についてはあまり語られないという感じ。またパトリック以外の心情はあまり語られない。
そして「②ヒューマンエラー」は終盤で視点人物がバトンタッチして、カルロに移行するんだけれども。カルロの視点はアレックスに近いようで、ちょこっとだけ違う。カルロもどちらかというと「人の動きを淡々と追う文章運び」がベースなのだけど、ところどころで「カルロが今、何を考えているか」が入る。でもそれは感情的なものじゃなくて、理性的な思考が大半。意外とカルロは感情の起伏がないというか。そんな感じだよね。
で、話は「ジェットブラック・ジグ」のほうに移りますけれども。ジェットブラック・ジグは全体を通して、その大半がアーサー(ないしアルバ、そしてシスルウッド)の視点を介して描かれている。この視点が独特で、これが文章量がバカ多くなっている理由に繋がっている。
アーサーの視点は、わりと解像度が高い。食洗器へのケチの付け方とかも細けぇし。時計がチクタクいう音に感じている圧迫感が重すぎる。アレックス視点だったら省かれているものが、アーサー視点になると事細かに書かれているんだ。
そしてアレックスと比較したとき、段違いに情景描写があることに気付く。でも情景描写なんかよりも圧倒的に多いのは、アーサーの頭の中の声なんだよね。彼が何を考えて、何を否定して、何に至るのか。それをグルングルンと書き続けている場面が多い。とにかくひとつのシーンの中にある思考量が多すぎる。さらに堂々巡りするのがアーサーの特徴でもある。
そのうえ、過激な内面の描写もある。たまに入るそれはくどいぐらいに濃い。で、第4巻はこの「過激な内面の描写」が以前より多くなっている。アーサーが闇堕ちしていくにつれ、それが増えていく。胃もたれするレベルで、それがくどい。
具象の世界も細かくねちっこく表現するし、頭の中は常時うるさいし、情緒はかなり負の要素に傾いているし……。アーサー視点はなにかとヘヴィーな要素が多い。だから書いているとき、どうしてもアーサーにのめり込みがちになるんだよね。そしてアーサーと同じように体調を崩したりする。
……アーサーの頭の中を描き切る行為って、本当に冗談抜きに「命を削る」っていう感覚があります。大変だし。しんどいよ。それでも、彼の頭の中を書くのが楽しいんだ。
「まとも」に近付いたペルモンドの、むしろダメになったところ。
第四巻の過去軸は「ヒューマンエラー」のちょい前の話になる。なので出てくるペルモンドは「ブリジットからも解き放たれて、ボストンを脱して、実は血の繋がりがない娘も引き取って、まともになってから10年ぐらいが経ったペルモンド」というフォームになってます。彼は、アーサーに憎まれるぐらいには、まともそうな「父親」になっている。
ペルモンドがなんで「まとも」になれたかは、五巻で描くことになるかなぁと思うのでここでは取り扱わないでおくとして。今回は逆に「ダメダメになった」ところに触れておく。
ペルモンドが「ヒューマンエラー」に登場し、初めて喋るシーン。あそこでペルモンドは理解に苦しむような言動を働き、パトリック&ノエミがドン引きして、ベネットさんから釘を刺されるわけだけど(大改訂で、ここのシーンはマイルドな仕上がりに変わった。アレでもね)。そのドン引きされる一番の要因となったのは「思いやりの欠如」なんすよね。赤の他人に対する思いやりがゼロ。
反面、一人娘エリーヌや、アーサーから預かった子供たちであるテッサ&レニー姉弟のことは大事にしようとするし、守り抜こうともする。アーサーのことも嫌いになれないから、アーサーから攻撃されても過剰防衛どころか防御すらしないで全部を受け止めるし、またアーサーに危害を加えようともしなければ反撃もしない。あと、パトリックには同情してるから、彼を助けようともする。
が、赤の他人は「どうでもいい」。大事に思っていない部下の扱いはぞんざいだし(その後、全員まとめてブッ殺したりしてるし)、「ヒューマンエラー」の中でもベネットさんとか軽くあしらわれてるし、グエン少佐なんて八つ当たりみたいな感じでひどい目に遭わされてるし。まともになった代償として人としての心の大半を捨ててしまった、そんなところがあります。
ボストン在住時代、エリカに縋って震えてた情緒不安定な姿が“ペルモンド”の素顔なのだとしたら、もうその素顔を見せられる人間がいなくなってしまった、ってな感じなのでしょうかね。ずっと虚勢を張ってやり過ごしているせいで神経がピリピリしているし、ペルモンド自身が「自分がどのようなペルソナであったのか」を見失っているような。そんな状態。
だからこそ「ジェットブラック・ジグ」4巻でアーサーと再会したとき、めっちゃペルモンドは嬉しかったんだと思う。本音を打ち明けられる友人が戻ってきた、って。――ただし。死線の向こう側から呼び戻されたせいで人の心を失くしたアーサー側は、どえりゃあ冷たい塩対応をペルモンドにしていたけどね。Ní chuireann Art fáilte roimh、ってなわけっすよ。
強すぎないからこそ部下に慕われてたボス、モーガン。
4巻からは、過去編にもマダム・モーガンが出てくるようになります。一昔前の彼女の動きと、かつての特務機関WACEにて彼女がどのような存在だったか、ってのが描かれている。
アレクサンダー加入以降の新体制では、アレックスから麻酔銃を食らうわ、アストレアに肩を銃撃されるわと、なにかと軽く見られがちになっていた彼女だけれども。それ以前ではちゃんとボスとしての威厳があったし、彼女がいなくなったことが崩壊の理由だった、というのを書きたかったわけです。
しかし。ボスとしての威厳といっても、彼女の場合は「不機嫌に、威圧的に振舞う」というようなものではない。凛として且つ機敏に、そして可能な限りに正直に、時に弱音とも思える本当の言葉も出す。そういう態度で他の者たちに接していた彼女は、自然と信頼を獲得していた、ってな感じである。
特務機関WACEの面々のことも、彼らが守ろうとしていた者たちや世界のことも好きになれなさすぎたせいで完璧に心を閉ざし、そのせいで高圧的に振舞いがちになり、信頼を失くしたアーサーとは正反対っすね。まあ、アーサーからすれば「知ったことか。好きにすればいい、私もそうするだけだ」以上でも以下でもないんでしょうが……。
そんなアーサーに対して、明らかに舐めた態度で接しているケイじいさんとて、しかしマダム・モーガンには敬意を払っているし、最期まで忠誠を貫き通したわけだし。彼女の右腕だったジャスパーなんて、最終目標が「全てを終わらせて、マダムを自由にしてあげたい」でしたもん。
そんな彼女だからこそ「特務機関WACE」なる牢獄を束ねられていたわけで、その彼女がいなくなれば瓦解するのも当然。アーサーは外れくじを引かされただけともいえるわけ。
あと、彼女は個々の適性を見抜いた。最適な場所に配置して、適性を引き出す目を持っていた。その「ちゃんと見てくれている」という安心感もまた、慕われる要因になっていたのだと思う。アイリーンなんかは、特に。
そこらへんもアーサーが疎かにしていたポイントである(彼とて、やろうと思えば出来たはず。が、やらなかった。やるべき理由が見いだせなかったことが要因)。ラドウィグなんかはアーサーから無関心ゆえの放置を決められて不満を募らせ、それが理由で簡単にASIへと寝返った、っていうフシがある。
4~5巻はASIサイド+ラドウィグの視点を基軸にしていく予定。
4巻からは「神ノ禍」と繋がってくるエピソードが増え、ラドウィグ(ないしルドウィル)にスポットライトが向くシーンが増えている。それに伴い、現在ラドウィグが与しているASIサイドの話も増えて、そちら側の登場人物が活発に動くシーンも増えた。
そして4巻では初めて「ASI&ラドウィグ側から見たときの、アルバ&アストレア」が描かれる。で、これが意味するところはラドウィグの覚醒。それまでは、自分がすべきことは認識しつつも「でもなー、状況が良くなくてさー、今はまだ動けねーよなー」だったサボり魔ラドウィグの心に、本格的な怒りの火が点いて動き出す(状況がやっと整い始める、という側面もあるが……)。そうして対立構造が明確になって亀裂から断絶になるという構図の微妙な転換が起こるってわけ。
アルバにはアルバの言い分があり、彼がトチ狂ったのにはそれ相応のワケがあり、彼だって昔はまともな一人の人間だった、ってのを描いてきたのが3巻までの物語ですが。4巻からは「だからといえ、踏み越えてはならない一線はあるだろうが!」(尚、4巻過去編の中でケイじいも同様の言葉を口にしている)と追及するラドウィグの物語になっていく……かも。
頭の中にあるプロットではそういう路線で行こうということになっているんだけれども、書いているうちに変わるかもしれないから、まだ断言はできない。なにせ最初は「三部構成でいきます!」って言ってたのに、それが4部となり5部になっている現状があるので(これでも、頭の中にあるプロットの大部分を端折った結果なんですがね。全部を完璧にやろうとしたら、おそらく10巻ぐらいになっていただろう)。
まあ、構図転換の話は五巻に入ってからにするとして……。
4巻の後半から多くなるのは、ASI局員たち+その協力者の動向に関するシーン。実はあまり描かれてこなかった「ベテランとしての局員ジュディス・ミルズの姿」(因みに、ジュディス・ミルズという登場人物の名前は、敬愛する哲学者「ジュディス・バトラー」から拝借したものです)や、他にも「同様の立場であったアイリーンと異なり)一人で抱え込まないスタイルで仕事をするダルトンの姿勢」、「相変わらずのアレックスに振り回されている局員たち」を映したエピソードがてんこ盛り。
……ダルトン、いいですよね。ああいうキャラが好きです。アーサーとは違ったベクトルで、考えていることと現在の言動が異なってるタイプです。
それから、ASIにおける主要なメンツの情報が少し明らかになったりする。ミルズ姐さんがミルズ姐さんになったワケ、本部長ジョンソンの私生活にまつわる嘆き、厚化粧アレックスのすっぴんに関する話など。蛇足かな、と思って今までは省いてきたものをちょこちょこ出しています。
あと、シリーズで最初に出てきたASI局員といえば、パトリック。ASIとアーサーとの対立が生まれる理由となったのも、パトリック。そしてパトリックの恨みは今もなお健在。
パトリックの元相棒がジョンソン部長ですから。この恨みがラドウィグに伝染し、彼を突き動かして、5巻に突入していきます。
黒狼ジェドは好きなヤツに忠実なワンコです。
黒狼ジェドといえば、昔にこんなグッズを出していた(LINEスタンプにも登場している)。
これは「DT//Sの中で、このシーンを出そうとしたけれども。邪魔だという理由でカットした」シーンが元ネタだったんですが、このネタを4巻でやっと出せましたね。やっと!!
そんな黒狼ジェドと、あと相棒のペルモンド(というか、彼そのもの)の関係って、正直よく分かんねぇってのが本音。黒狼ジェドは最初、彼という「肉体=人間世界で不自由なく
遊べる 活動できる器」が欲しかっただけ。ちなみに、黒狼ジェドがそれを欲しがったワケは今は非公開にしている作品に書いてました。それが以下のものである。
「俺と同じ緑の目をした女がいるぜ。あの女、気に入った! よし、あいつの体を……――いや、待て。息子のほうが良い緑色をしてるぞ? なら、あいつにしよう。あの目が欲しい」
たったそれだけの理由のために、彼はまだオギャァオギャァのベイビーだった頃から黒狼ジェドに付きまとわれて、黒狼ジェドのせいで「頭のおかしい病んだ子供」認定を両親からされて、挙句に……。
なのでペルモンドは黒狼ジェドに対して「近寄るな、このクソ狼! 失せろよ、アァァッ!!」がデフォルトである。
ただ、ペルモンドには彼以外の顔がある。黒狼ジェドを逆に利用している顔(猟犬ジャフ)もあるし、盲導犬代わりに使役していた頃もあったし(便利屋ジャックをやってた時代)、切るに切れない半身として仕方なく共生する生活を受け入れた顔もあれば(ジュードですね)、愛すべき『ペット』のように可愛がっていた側面もある(ジェイド、ジャレッド)。
そんな感じなペルモンドの一貫性の無さに、3巻でシスルウッドが大いに振り回されて、ハチャメチャに苛立っていましたけども。黒狼ジェドちゃんはシスルウッドの数倍はペルモンドに振り回されているし、振り回されすぎて精神的に変なことになった。
最初は「体」を乗っ取るために近付いただけ。でも、ジェドはその中身まで好きになっちゃった。顔も、もちろん好き。あの顔になりたいと願っていることだろう(※鼻筋の折れ曲がった現在のペルモンドの顔でなく、顔面ぐちゃぐちゃになる前のペルモンドの顔だけれども)。
今風に言うなら、ジェドにとってペルモンドって「推し」みたいな感じやろうなと。この言葉嫌いだけど、近い感覚はそれ。推しの願いならなんでも叶えるぜ、推しの望みならなんでも聞くぜ、推しのためなら何だって貢ぐぜ、だから「ごほうび」をちょうだい、みたいなノリ。純粋な善意というより、下心に基づく。行動原理はそんなところだろう。
冷たくあしらわれる態度も「ごほうび」、褒め言葉も「ごほうび」、変な芸を強要されてコマンドをしっかり仕込まれることも「ごほうび」、使い走りを命じられることも「ごほうび」、お腹なでなでしてもらえることも「ごほうび」。
……カタチは多少違えど、これはセィダルヤードに対するパヴァルの態度と同様なんですよねー(遠い目) どちらも、奉仕の対象のことが何だかんだで大好きだから「あの人の願いを叶えるために、頑張るぞい!」なとこがある;当人らは無自覚だが。
そんなジェドの厄介な点は嗜虐趣味があるところ。ペルモンドもとい“彼”がジェドを疎むのもそれが理由。「推し」が泣いて嫌がって悲鳴を上げて助けを求めてくる、または慈悲を乞う顔を見るのも好きなのが、ジェドが「推し」から嫌われている理由である。
ペルモンドがしっかりとコマンドを利用し、ジェドと距離を維持するのにはそれなりの理由がある。ただ、ジェドがコマンドを守るのにも「推しを虐めたいけど、でもこれ以上、推しから嫌われたくない」って理由がある。どっちにしろ、ジェドはそれなりに従順なワンコです。
エコーが自我を持ったキャラとして初登場!するも、本格的な参戦は次巻におあずけ……。
本当に一瞬だけ、最後のとこにエコーの存在が出てきます。存在だけ。本人の登場は次巻からです。
まあ、お楽しみに~。
【余談】難航する挿絵作業により、出版計画に狂いが生じている。
「挿絵なんて一日ありゃ一枚終わる。そんな時間かからないべ」って、当初は思ってた。実際、神ノ禍のときは挿絵一枚一枚にそんなに時間が掛かってない(なので今見返すと、うわ書き直したいっていう衝動が込み上げてくる)。
なのだけど。今回、空中要塞アルストグランシリーズに挿絵を入れるに当たり、めっちゃ作業が難航している。というのも、この作品、地味に背格好やら体型が話に響いている側面があり、絵もちゃんと反映させないといけないからだ。それが非常に面倒くさい。
まず主人公のアレックス(↑画像、左から2番目)。すごいガッチリ体格。ムキムキでムッチムチ。なのに手癖に任せるとほっそりした体格で描きそうになる。
というか「アレックスの体格を正確に書くこと」を意識し出したのが、挿絵作業に入ってからだからさ。今までに蓄積してきた描き方のクセが抜けなくて。
細身のアレックスを描いては消して、描いては消して……っていうのを繰り返してたら、一枚を仕上げるのに2週間ぐらい掛かってしまっている。それなのに出来は正直言うと、微妙。やばい。どうしよ。
そしてアレックスに次いで悩ましいのが、最重要人物ペルモンド(↑画像、中央右)の体格。白骨化したら性別不明になりそうな体格をしているし、その点が地味に重要なので。だから敢えて体のラインを出したいわけだけど、そうすると構図選びが難しい。決まらない。
それから、地味にバランスを取るのが難しいのがアーサー(↑画像、中央左)。長い、細い、そして撫で肩。この3要素を出したうえで「威圧的に、威厳ある雰囲気で」「見た目だけは良い男を装っている感じ」を出さにゃならんわけで。でも、いろんな付加要素を取っ払ったアーサーはあの画像の通りなのよ。あの頼りなさげな雰囲気しかない男を……――威厳ある雰囲気に?!(ジェットブラック・ジグ4巻そのものが、そういうテーマだ)
アーサーは顔だけだとどーにか誤魔化せるんだけど、全身を描くとなった途端に難易度が爆上がりするキャラなので。大変。難しいんだよ、バランスが。
主要人物の体格がよりにもよって厄介者揃いで、悩ましいことこのうえない。その点「あざらねこ」のコービン(↑画像、一番右)は――首から下は――すっごい簡単に描けるのでラクチン。ただしコービンの一番のネックは顔なんだけどね!!