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アフリカーンス語、イディッシュ語、ヘブライ語。この三つだけは死んでも身に着けたくないと誓っている。

近頃、惨憺たる映像に見飽きすぎて、ヒトの業の深さに辟易とさえしてきた。日本の報道機関で取り扱われる映像は生ぬるいレベルで、SNSで出回る速報性の高いものは陰惨なんてもんじゃない(デマだと思いたいものが多々あるが、恐らくそうでないことが憎い)。

 パレスチナ問題って、歴史の授業で習うもんだし、みんなが知ってるもんだと勝手に思っていた。しかし現実で対面して話をする人々は恐ろしいとさえ思えるほど全く何も知らず、なぜこのような事態に発展したのかというところからいちいち説明してやらねばならぬことのほうが多くて、これまた辟易する。

 植民地主義が遺した禍根、宗教的な思想問題、その土地もとい周辺の民族の様相、経済・インフラに関する歪んだパワーバランス、金持ちユダヤ人から選挙資金が欲しい各国のアホどもの思惑とアホどもに振り回されるせいで機能しない国連、なんでも「反ユダヤ!ホロコーストを学べ」というカードで封じ込もうとする言論統制、「テロ組織」による民衆の搾取の構図、子供の比率の異常な多さ……――思いつく限りのアレコレを並び立てて説明しても、他人が出した結論が「どっちもどっち」に終始していると、落胆する外ない。

 これは果たして、どっちもどっちで片付けていい問題なのか。そうだとは到底思えない。

 家も仕事も家族も奪われて、絶望した大人たちが自ら命を絶っていく中、その背中を見て育った子供たちが若者となったときに、憎しみから武器を手に取ってしまうのは当然の流れなのではないのか。そして、そのような憎しみを利用して私腹を肥やそうとする「悪しき大人」が出てくるのも、容易に予測できることではないのか。

 ならば、その火種の原因を取り去るべきだろう。つまり、イスラエルなんて国を失くしてしまえばいい。そうすりゃ、ひとまずひとつの火種が消える。

 ダラダラと資金を与えてるアメリカが、その責任取ってイスラエル国籍の人間を全部引き取って、その全てをアメリカ人にしてしまえばよろしい。「神の国USA!!(と、アメリカ人が言っていたのを実際に見たことがある」で真なる神の国を作らせればいいじゃないか。国土、余ってんだろ? 空いてる土地を拓いて「イスラエル州」を新たに割り振ればいいじゃないか。

 ……なんてのは、まあ現実的な意見ではないのだろうが。正直な本音は、それだ。イスラエルに好感を抱いている国なんてアメリカしかないんだから、アメリカがパレスチナ情勢を引っ掻き回したその責任取れやと。

 まあ、そんなのをやる国じゃないことは分かり切っている。あくまでも夢物語さ。それに、仮に「パレスチナ」が本来の国土を取り戻したとして、そこにまともな国が出来上がるとは到底思えないけれど、それはそれで別の問題。

 自分は一貫してパレスチナを支持しているし、それは今後も変わらないだろう。ハマスという組織が仕掛けた残虐な行為は非難すべきだが、そういった過激思想が生まれてしまう元を断たねば終わらない問題なのだとも考えている。それに、ハマスがテロ組織であるなら、イスラエルはロシアと同等かそれ以上のテロ国家であるとみなすべきであろう。

 満州国を建国すべきでなかったように、ナゴルノ・カラバフ自治州が消えてしかるべきで、東トルキスタンは東トルキスタンだし、ウクライナはウクライナであって、パレスチナもパレスチナである。イスラエルなんて国はない。植民地主義の究極の遺物をこの現代に残しておく必要はないし、亡国は歴史の中に埋もれさせておくべきだ。でないと大ロシア主義や「華僑在る国、即ち中国なり!」といった横暴を許すことに繋がるのだから。

 それは人種差別だ、と言われたら。そうだね、と返すしかないのだろうか。でも、アパルトヘイトをしているような連中に「どっか行け」と中指を突き立てることは悪いことなのかしらね。だって、そいつらが立ち去りさえすれば、クソみたいな理由で誰かが死ななくて済む未来が来るんだよ? なにせ、そいつらが「誰か」を殺してんだから、それも大勢の丸腰の若者や子供を。それも背中から、笑いながら撃ち殺してんだ、それも平時に。

 とかなんとかで、自分には自分に誓っていることがある。それがアフリカーンス語、イディッシュ語、ヘブライ語を学ばないこと。いけ好かない歴史を持っていて、それを省みることもしてなさそうな連中が使ってる言語なんて学ぶ価値もないのだから。イディッシュ語については特に、オリバー・サックスの自伝本を読んで固く決意したもんだ。

***

 連日流れてくるニュースを見ていて、気付いたことがある。西欧のほうで「パレスチナ支持のデモは禁止(しかしイスラエル支持のデモは禁止しない不合理さ)」といった動きが国レベルではある中で、しかし民衆がそれに従っていなさそうな点だ。

 そしてパレスチナ支持のデモ:pro-palestine demonstrationの様子を収めた写真などを見ていると、そこにある人々の多様性に目がいく。在外パレスチナ人やアラブ系、イスラム教徒が多いのはさることながら、そうでなさそうな属性の人々が数多く混ざっていることに驚いた。その中の多くの人は、単に人道を、人間性を求めている。

 にも関わらず、単に人道を履行せよと求める声すら「ナチズムだ」とまとめられているようだ。これを恣意的な偏向報道と呼ばずして、なんと呼べばいいのだろう。

 反面、イスラエル支持のデモを見てみれば、何もかもが均質化されていて絶句する。みんな肌が白くて髪の色が明るくて。ゾッとするような、倫理観を疑うような言葉を平気でぶちまける人間が多くて……――そりゃ、世界中から嫌われるよっていう要素が集合していてさ。そちらも驚いたよね。

 「私たちはガザの連中に水や燃料を分け与えてあげているのだ。そんなことをする義理なんて本来はないのに!」と宣っている連中が多くて、本当にゾッとする。水や燃料を分け与えてもらえなければ市民が生活できないような世界にガザを変えたのはどこの誰だよ、と鏡を突き付けてやりたい。そんな怒りに震えている。

後日追記:


 とはいえデモに紛れた暴動や刃傷沙汰は支持できない。ヘイトクライムはいかなるものであれ許されるものではない。日本ではそうならないことを祈る。

 でも、まあ、ヨーロッパのほうで何かが起きたとしてもさ。それって、今までの振る舞いのツケともいえるよね。アラブ系の住民やイスラム教徒を軽んじてきたツケが、これを機にまとめて支払われるようなことになるのかもしれない。

 フランスなんか特にだよ。口先で綺麗事をならべた裏側にあった現実が、これを機に沸騰してくるだけでしょう。それは自業自得というやつではないのか(日本も他人事ではない。技能実習制度という名目でアジア圏から来た人々を散々に扱ってきたのだから。そして、そのしっぺ返しは少しずつだか始まっている)。

 自分は、宗教は否定しないが、しかし人道と公正しか信じないし、如何なるものにも帰依するつもりはない。ゆえにパレスチナを支持し、イスラエルに中指を立てる側のスタンスだが、聖戦という言葉は非難するし、流血も容認できない。

 なのでハマスの行為を非難するが、けれどもそれをテロルだとレッテルを貼ることはしたくないし、できない。殺害されたイスラエルの人々が無辜の民かといえば、そうではないと思うからだ。

 他国から出稼ぎに来ていた労働者、巻き込まれた観光客は完全なる被害者であろう。が、ネタニヤフのようなヒットラーと同じ人間性を持つ政治家を選挙で選出したイスラエル人は、はたして被害者か?

 常々迫害してきた隣国の民が牙を向いた途端、ケダモノやら害獣だと騒ぎ立てて被害者ヅラをする連中に武器を供与しろというのか? 民族浄化に使われると分かりきっているのに、武器を渡せと?

 無理だ。その国民性が受け入れられない。

 何かのインタビュー動画でで、あるイスラエル人の男性が「パレスチナ人を同じ人間として見ることができない、これからどう彼らと付き合えばいいのか?」と泣いているシーンを見たけれど、正直なところ「イスラエル人を同じ人間として見ることができない」と自分は思ったよ。

 子供を笑いながら殺す兵士が大勢いて、SNS上で「今日は◯人のパレスチナ人を狩ってやったぜ」と競い合う者まで居て、しかしそれでも裁きも咎めもしてこなかったイスラエル人を、同じ人間だとは思えないよ。人間としての何か大事なものが国民全体で欠けているのではという大袈裟な恐怖さえも抱く。

 そのような残虐非道な仕打ちは、ユダヤ人がヨーロッパで受けたきたというそれと何が違うのか。

 それに、パレスチナの地で起きている今の状況は、ナチス・ドイツとソ連の戦いに似ているとしか思えない。ソ連を侵略したナチス・ドイツが、ソ連に反抗され敗北した状況にそっくりなのでは? 指導者がどちらもクソという点もそっくりたし。侵略されている側の若者はのしかかる二重の恐怖からどこかへと逃げることもできず、敵陣に武器を持って突っ込むしかないという状況も似ている。

 無論、ナチス・ドイツ側がイスラエルで、ソ連側がハマスもといガザだ。

 この戦争は恐らく、パレスチナの地のみに留まらないのだろう。欧米諸国は、本当の意味で他民族を省みてこなかったツケを支払うことになるはず。

 誰かが言っていた。ハマスが負けることはない、と。恐らく、それは正しい。ハマスが仮に殲滅されたとしても、イスラエルを非難する国々は態度を一にして結束するだろうし、その背後には欧米諸国への不信感があるだろうし、それはある意味において「勝ち」だ。

 グローバルサウスだとか第三世界と呼ばれる勢力が結束を強めて、俗に言う「G7」が無視できぬほどの力を得る可能性は無きにしもあらず。そしてどさくさに紛れてロシアやら中国がより影響を強めるだろう。

 国連が正しく機能していたなら、こうはなっていなかったのかもね。でも、これは誰のせいだ?

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後日追記その2:

 ジュディス・バトラー、さすがです。畏敬の念しかありません。